血の病理
血の不足による血虚、血の運行失調による血瘀、熱の影響を受けた血熱の3つに大別される。
血の不足による病態
血虚
血の不足あるいはその滋養作用が減退した病態。
脾の機能低下や過労によるものであり、血による滋養が不足することから起こる。
【原因】
①飲食物の摂取不足 → 血を化生する量が減少する
②脾の機能の低下 → 血を化生する量が減少する
③過労 → 血が消耗される
④外傷や手術、出産など → 大量に血を失う
【症状】
①眩量・顔面蒼白
血が不足
↓
頭部や顔面部を十分に滋養することができない
②動悸・不眠・健忘
心血が不足
↓
心を十分に滋養することができない
③しびれ・痙攣
肝血が不足
↓
筋を十分に滋養することができない
④目のかすみ、視力減退、爪の変形
肝血が不足
↓
目や爪を滋養することができない
⑤経色淡白・経少・月経痛
血が不足
↓
女子胞(胞宮)に供給される血量が減少する
↓
経血色は淡白となり、経血量は少なくなる
女子胞が栄養されないため月経痛が生じる
血の運行失調による病態
血瘀
血の運行が、緩慢ないし停滞して起こる病態(瘀=淀んでいぶ状態)。
瘀血は滞った血のことで、病理産物である。
【原因】
①熱が侵襲もしくは内生 → 血が損傷され、粘稠度が増し滞る
②寒が人体に侵襲もしくは内生 → 寒の凝滞性が血に及んで滞る
③気虚により推動作用が低下 → 血が滞る
④血虚により血流量が減少 → 血が滞る
⑤打撲や捻挫などの外傷 → 血が血脈から漏れ出して滞る
⑥気滞により気の推動作用を受けることができない → 血が滞る
⑦疾湿により血流が妨げられる → 血が滞る
【症状】
①固定痛・刺痛
血が滞る
↓
疼痛が生じる
血は気に比べ動きにくい
↓
固定性の刺すような痛み(刺痛)を呈する
②腫脹、腫塊
血は滞ると瘀血となる
↓
腫塊を形成する
③紫舌・暗紅舌・瘀斑・瘀点・皮下出血斑
血が滞る
↓
身体所見には紫色や暗紅色が多く見られるようになる
④シミ・色素沈着
瘀血が気血の運行を阻む
↓
皮膚を十分に滋養することができない
↓
皮膚のシミや色素沈着が出現する
⑤肌膚甲錯
瘀血の停留により皮庸を長期間滋養できない
↓
肌膚甲錯(鮫肌)が起こる
⑥月経痛・血塊が多い
血瘀
↓
月経不順や月経痛が起こる
女子胞で血が滞る
↓
血塊が多くなる
血熱
血が熱の影響を受けた病態。
症状は様々あるが、心神への影響、血の運行の乱れ、陰液の損傷の3つに大別。
【原因】
①熱が人体に侵襲 → 血に影響を与える
②過剰な情志の変化 → 体内に熱を生じる
③辛いものや味の濃いものの過食 → 体内に熱が鬱積する
【症状】
①発熱・発赤・発疹・痒み
熱が体内に鬱積
↓
発熱する
皮膚に鬱積
↓
皮膚症状が現れる
②出血
過剰な熱によって血の運行が速くなる
↓
血が血脈からあふれ出して出血症状が起こる
(熱には生理物質の推動を促進する特徴がある)
③潮熱・五心煩熱・盗汗・口渇
熱により陰液(血・津液・精)が損傷される
↓
各種熱症状が起こる
④心煩・不眠・精神不安
血熱が盛んになる
↓
心神に影響を及ぼす